父が亡くなったのは、僕が小学校6年生の冬だった。
その日、僕はいつものように友達と公園でサッカーをしていた。
冷たい風が吹く中、みんなは夢中でボールを追いかけ足りまわって
家に帰ると、いつも明るいはずのリビングがやけに静かで、母が一人で座っていた。
顔は涙でくしゃくしゃになっていて、僕を見た瞬間、泣き崩れた
「お父さんが……もう……」
その言葉を聞いたとき、頭の中が真っ白になった。
父はいつも元気で、家族の中心だった。
仕事から帰ってくると僕とキャッチボールをしたり、週末は一緒に公園へ遊びに行ったりした。
でも、その父が突然目の前から居なくなくなったの。
その日から、家の中はほとんど時間がかかってしまったようだった。
数日後、僕はひとりで父とよく行った公園へ向かった。
ボールを持って、ただ黙って歩いていた。
公園に着くと、寒さに負けない子どもたちが元気に遊んでいる中、僕はベンチに座り、ボールを足元に
父と過ごした日々が頭の中に浮かんだ。
初めてキャッチボールを教えてもらったとき、僕が下手で何度もボールを落としたこと。
言われたこと。でも、今はもう…
僕はもうボールを投げても取ってくれる相手がいないからキャッチボールができないことに気づいた。
寒い風が僕の頬を撫でて、父のいない現実が心に重くのしかかった。
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