父は昔、バンドを組んでギターを弾いていた。
僕が小さい頃、父はよくギターを持ち出して、リビングで弾き語りをしてくれた。
その時の父の顔はいつも楽しかった、僕もその音色が大好きだった
中学生になり、父は仕事がうまくいかなくなり、家でギターを弾く姿がほとんど見えなくなった。
そしてうつ病になり自殺してしまったのだ。
父が亡くなった後、実家の片付けをしていると、ほこりをかぶったギターケースがクローゼットの奥から出てきた。
ケースと、その中には父の手で磨かれたギターが静かに横たわっていた。
私はそっとギターを手に取り、リビングに座ってみた。
父がどんな気持ちで弾いていたのかを考えながら、見よう見まねでコードを鳴らしてみると、不思議と少しずつ父の弾くメロディが頭の中に流れ始めた
指先が痛くなるまで弾き続けながら、僕は思った。
父がギターでずっと伝えたかったものが、今になって少し分かってきた気がした。
ギターの音色には、父の温もりと、僕に伝えたかったメッセージがこもっていたのだった
今でも時々、父のギターを弾いて、まるで父が隣に座っているような気がする。
父が残ったギターは、ただの楽器ではなく、父との思い出と、父の想いを感じられる
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